狂言「鎌腹」
シテ・山本則俊
アド・山本則秀
アド・遠藤博義
狂言「鎌腹」の充実感はとてつもない。山本則俊さんの狂言を拝見していると、自分がとてつもなく
貴重な舞台に接しているのだという思いを強く抱く。全体の構成、細部の仕上げ、どこをとっても
最高度に完成された芸術品なのだ。緩むことのない、見所にとっては心地良くさえある緊張感。
無駄なく、完璧に均整のとれたかたちとことば。(小道具の扱いさえ、疎かにならないのだ。)
そして、その裡から溢れ出てくる諧謔味。山本家の狂言は、型の美しさが何より特徴かと思うが、
諧謔味という点でも、流儀を超えて、今まで見た中でも最高のものではなかったかと思う。
語りの間合いも絶妙、何より役柄が完璧に消化されていて、演技でここまで表現しきれるものなのかと、
ただただ感嘆する。
流儀の能の会の狂言というのは、見所の集中力が乏しく落ち着かないものになりがちであるのが、
その出から、そして最初の詞から最後まで見所の集中をかちえ、なおかつ見所からこれだけの笑いを引き出した
その芸の力に感銘を新たにした。